【どう見るこの相場】備蓄米争奪戦は序章にすぎない!コメ関連株の次なる主役は「農政改革」関連銘柄か?
- 2025/6/2 08:20
- どう見るこの相場

■「備蓄米」争奪戦の裏で石破内閣の命運を握るコメ価格高騰
まさに「令和の米騒動」である。江戸時代の「大塩平八郎の乱」のようなクーデターでも、第一次世界大戦後の鈴木商店の焼き打ち事件のような暴動でもないが、テレビニュースやワイドショーでは連日、微に入り細に亘りトップで政府備蓄米の随意契約による売り渡しが報道されている。反響も大きく前週末に、大手小売り事業者に売り渡されネット販売や一部小売り店舗で売り出された備蓄米は、ほぼ瞬間蒸発のように売り切れ、店頭での備蓄米争奪戦の様子も画面にアップされた。
■安かろう不味かろうは許されない!備蓄米の品質問題が参院選の争点に浮上
と同時にテレビ画面では「古米、古古米、古古古米、クズ米、エサ米」などの文字も大映しされ、備蓄米の食味や品質問題が懸念され始めた。備蓄米は、ブランド米が5キロ=4000円台で販売されているのに対して5キロ=2000円台での販売価格が設定されており、「安かろう不味かろう」では末端の売れ行きに大きく響くことなる。「米は買ったことがない。売るほどある」と不規則発言をして更迭された江藤拓前農林水産大臣の後任に就任した小泉進次郎農林水産大臣は、備蓄米の放出を前任者の競争入札から随意契約に切り換え、末端での販売価格設定にまで介入したが、品質問題に関してはテレビカメラの前でこの古米、古古米を食べ比べるパフーマンスを余儀なくされた。第二次世界大戦後の食料難時代には、政府が配給する輸入米に大量に有毒なカビが発生し健康被害を懸念する世論の非難を浴び、配給中止に追い込まれた黄変米事件の前例もあっただけにアピールに万全を期したというところだろう。
石破茂内閣が、これだけコメ価格問題をアピールせざるを得ないのは、今後の政治スケジュールと大いに関係する。今国会は、6月22日に会期末を迎え、この日は参議院選挙の前哨戦といわれる東京都議会選挙の投開票日と重なり、7月の参議院選挙へと続く。一連の選挙の争点の一つとなるのが物価問題である。前週末30日に総務省が発表した5月の東京都区部の消費者物価指数は、前年同月比3.6%上昇と上昇率が加速し、品目別では「コメ類」が93.7%上昇と1年前のほぼ倍近い急騰となっていた。しかも帝国データバンクの集計によれば、今月6月の飲食料品の値上げは1932品目と前年同月の約3倍にも急増する。
■「農政改革」の成否が選挙の鍵!コメ価格高騰が株式市場にもたらす波乱
これは、「昔 内閣支持率、今 コメ価格」となる可能性が高まってきたことを大いに示唆する。かつて保革が伯仲し「ねじれ国会」が続いた時代には、内閣支持率が10%上下すると日経平均株価も1000円幅で乱高下する政局方程式が定式化していた。ところが、現在は価格高騰が止まらいコメ価格が、今月6月初旬に政治公約通りに沈静化するかどうかが、有権者の投票行動に直結して少数与党となった石破茂内閣の命運を握り、政局の流動化懸念を再燃させ株式相場にも影響を与えることになりそうなのである。物価高対策としての消費税減税要求も、勢いを増すはずである。小泉大臣は、米不足に対応して増産を目指すべく父親の小泉純一郎元首相の「郵政改革」譲りの「農政改革」にも言及したが、もともとの自民党の票田の農村票がどう反応するか、選挙結果に吉と出るか凶となるか見物である。
きょうスタートする6月相場は、「荒れる」との相場アノマリーがある初商いが2日の「二日新甫」である。このアノマリー通りに、好決算発表をキッカケに「エヌビディア祭り」の再燃を期待されたエヌビディアの上値は重くなり、トランプ大統領にUSスチールの買収計画を承認された日本製鉄<5401>(東証プライム)も、承認内容の詳細がまだ一部未確定ななかどう反応するか引き続き「トランプ・ディール(取引)」に一喜一憂、右往左往する展開が想定される。
■農機・農薬・小売まで「コメ関連株」に照準
そこで今週の当コラムでは、この「トランプ・ラリー」のやや圏外に位置する独自材料人気を内包するコメ関連株に注目することにした。すでに前週末30日に大手紙の備蓄米の「精米工場の奪い合い」報道関連で井関農機<6310>(東証プライム)が、年初来高値を更新し値上がり率ランキングの第3位にランクインしたケースも出ている。関連株相場のスケールアップの予兆かもしれない。今回の備蓄米売渡しの随意契約を申請した小売り事業者、稲作に進出した副業異業種株、株主にコメ関連製品を贈呈する株主優待制度銘柄、さらに「農政改革」関連の農機株、農薬株などに広く網を張り、こちらは価格沈静化ではなく価格高騰を期待して追随買いの随意契約をするのも、一考余地がありそうだ。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)